人間の三大欲求には、食欲、性欲、睡眠欲があるといわれている。
これら三大欲求には、共通する性質がある。
それは、「接着」。
食欲は、食べ物を自分の体内に取り入れようとする欲求だ。
牛乳でも、パンでも、食べ物というのは、食べられるまでは、
自分の体の外にある。
自分のからだと食べ物のあいだには、間隔、スペースがある。
食べるというのは、その間隔、スペースをなくして、
食べ物を自分のからだに近づけ、接着させ、さらには、
体内に取り込んでしまおう、ということである。
性欲というのは、異性と性交渉したいという欲求だ。
性交渉するまでは、異性は、自分の外に存在する。
自分のからだと異性のからだのあいだには、間隔、スペースが存在する。
性交渉をする、というのは、その間隔、スペースをなくして、
異性のからだと自分のからだを近づけ、接着させ、
出したり入れたりしようとすることだ。
睡眠欲は、眠ろうとする欲求だ。
ふつう、ひとは、立ったり座ったりして寝たりはしない。
寝るときには、横になる。
起きて、日常生活を送っているときには、
立ったり座ったりして活動している。
そのとき、自分の体と大地や床のあいだには、間隔、スペースが存在する。
寝るというのは、横になるというのは、
その大地や床と自分のからだのあいだにある間隔、スペースをなくして、
自分のからだと大地や床を、接着させるということだ。
以上、見てきたように、
人間の三大欲求にはすべて、接着という要素がかくれている。
英語でいうと、「ON」。
「欲」という漢字は、「谷」と「欠」があわさってできている。
「谷」のなかには「口」が存在する。
自分は、この「口」というのは、たんなる人間の、
ものを食べるための口を意味するばかりではなく、
「ある空間が確保されているということ。その空間は、物理的な
ものばかりではなく、抽象的な意味でのものも含める。
ある領域が、侵されないスペースとして、確保されている、
ということ」といった内容をもしめしているのではないか、
と考えている。
であるならば、「谷」に「欠」をくみあわせた「欲」という漢字は、
そういった間隔、スペースをなくしてしまおう、欠かしてしまおう、
とするようなはたらきが、原義としてあるのではないか。
そして、人間の三大欲求はすべて、「生きる」ということと関わる。
人間が食べるのは、その人1人が一生を生きるためであり、
人間が性交渉をするのは、自分が死んだ後もべつなかたちで
自分が生き続けるためだ。
人間が睡眠をとるのは、疲れをとり休息するためであって、
やはり、命をつなぐことと関連する。
つまり、三大欲求には接着という要素がかくれていて、
接着というのは、間隔やスペースをなくす、というはたらきに
関連していたが、
三大欲求は同時に、「生」の原理ともかかわる。
ということは、「生」の原理というのは、
間隔やスペースをなくしてしまおう、という原理とかかわりが
あるのではないだろうか。
漢字についての、その他の記事は、こちらから↓